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2012年6月11日 (月)

芸能人家族の生活保護受給問題

講義で用いた資料をまとめておきます。
このテーマは香ばしい方が湧いてくるのでコメントは禁止とさせていただきますw

■河本準一さん会見まとめ
1.15,6年前、母は病気のため働けなくなり、自分で生活保護の手続きをしてきた。河本氏に福祉事務所から連絡があったが、当時の年収は100万円を切っており、生活費の援助ができなかった。そこで生活保護受給が始まった。
2.数年後(5年ほど前)、全国のテレビ出演ができるようになり、福祉事務所から援助の問い合わせがあったため、援助を開始した。この援助額については福祉事務所に連絡してあり、その分が生活保護から減額されている。援助額は不明。
3.さらに数年後、事務所から援助増額の相談があり、増額した。その分はもちろん生活保護から減額されている。援助額は不明。
4.受給の打ち切りについては半年ほど前より話し合いの場を設けていたが、最終的には今年3、4月ごろに母親が「これ以上迷惑はかけられない」と打ち切りを決めたと明かした。吉本興業によると、週刊誌の報道を受けて決めたという。
5.今後は、河本さん自身が「テレビにたくさん出られるようになった」と認識している5、6年前からの受給分を返還していくことを検討している。

もっと自分がしっかりしていれば…河本準一さん涙で会見(livedoor) - livedoor ニュース

■保護の要件
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先する

厚生労働省「生活保護制度」

■厚生事務次官通達「扶養義務の取り扱い」
「…民法上の扶養義務は、法律上当然の義務ではあるが、これを直ちに法律に訴えて法律上の問題として取り運ぶことは扶養義務の性質上なるべく避けることが望ましいので、努めて当事者間における話合いによって解決し、円満裡に履行させることを本旨として取り扱うこと」

介護の再生「助け合える家族がいれば、生活保護を受けられないのでは?」

■生活保護制度の運用
1.生活保護制度の運用上、扶養義務者の扶養は保護利用の要件とはされていない
2.成人に達した子どもの親に対する扶養義務は、「その者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上で、余裕があれば援助する義務」にすぎない。
3.しかも、その場合の扶養の程度、内容は、あくまでも話し合い合意をもととする
4.もし、扶養の程度、内容が、扶養義務の「社会的地位にふさわしい生活を成り立たせ」ることを前提としても、なお著しく少ないと判断される場合には、福祉事務所が、家庭裁判所に扶養義務者の扶養を求める手続きが生活保護法77条に定められている

生活保護問題対策全国会議のブログ「生活保護制度に関する冷静な報道と議論を求める緊急声明」

■生活保護制度の現状
生活保護費の不正受給が2010年度に約2万5千件(前年度比29%増)、総額は約129億円(同26%増)にのぼったことが、厚生労働省のまとめで分かった。件数、総額ともに過去最悪だった。厚労省が1日、全国の担当課長会議で集計結果を示した。
10年度の生活保護費は総額3兆3300億円で、不正受給分はこの約0.4%にあたる。不正の中で、生活保護を受けられる基準から外れたとして、保護の中止や減額につながったのは約7千件だった。
不正受給の内訳では、働いて得た収入があるのに申告しなかったケースが最も多く43.5%。次いで年金の無申告が27.7%だった。このほか、借金先の消費者金融から過払い金を取り戻せたのに申告していなかった例もあった。

朝日新聞「生活保護不正受給、過去最悪の129億円 10年度」 2012年3月1日

■弁護士の見解

Lawcusさんによる「三親等以内の扶養義務について」

黒葛原歩弁護士による河本準一さんの問題を中心とした生活保護についての分析  #生活保護 #不正受給 #ナマポ #吉本興業 #河本準一 #河本 #片山さつき #世耕弘成

■生活保護の保護率は2.7%(2009年)
ドイツ9.7%、イギリス9.3%、フランス5.7%

社会実情データ図録「生活保護世帯数と保護率の推移」

生活保護問題対策全国会議のブログ「生活保護制度に関する冷静な報道と議論を求める緊急声明」

※国ごとの制度の違い?

■日本における生活保護の捕捉率は従来の研究によると10~20%
2010年厚生労働省の試算によると32.1%~75.8%(用いる調査データによって異なる)
厚生労働省社会・援護局保護課「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」2010年4月9日

一方、イギリスでは87%、ドイツは85-90%
(細かいデータ分析■実態の把握――貧困率 活用になお課題”. 朝日新聞 (朝日新聞社): 朝刊、第13版、第3面. (2009年11月19日))

■その他関連ページ
NAVERまとめ「「生活保護」について知っといたほうがいいこと」

土佐のまつりごと

■生活保護受給世帯の44%は高齢者世帯、母子世帯8%、傷病者世帯23%、障害者世帯12%、その他の世帯13%

国立社会保障・人口問題研究所

生活保護年齢構成比・男女比
被保護人員、 級地・単身世帯-その他世帯・性・年齢階級別  (厚生労働省:平成21年被保護者全国一斉調査)

■まとめ(私見)
1.河本さんの母親に対する扶養義務は「生活扶助義務」であり、実際、個別の事情に配慮した柔軟な運用がされている。これは厚生省事務次官の通達にもあるようにフォーマルルールである。従って河本さんの収入の如何は母親の生活保護費受給の要件ではなく不正受給にはあたらないし、不正を疑うようなケースとも思われない。
※ただし、河本さんの母親が河本さんから受け取っていた仕送り額を過少に申告していた場合は問題になるかもしれない。

2.つまりこれは「フォーマルルール」の問題ではなく、扶養義務をいかに果たすかという「モラル」の問題

3.自民党議員の主張の本質は「不正の追及」ではなく扶養義務を強化するという「ルールの書き換え」。ルール違反でないものを、「芸人」「年収5,000万円」「不正受給」といった目を引く単語で煽るのは、たとえ不正受給を正したいという動機づけがあったとしてもミスリーディングでありフェアなやり方ではない。

#ちなみにこうしたやり方については名誉毀損の可能性も高いという。
黒葛原歩弁護士による河本準一さんの問題を中心とした生活保護についての分析  #生活保護 #不正受給 #ナマポ #吉本興業 #河本準一 #河本 #片山さつき #世耕弘成

4.生活保護費増加の主要因は経済の悪化と人口構成の高齢化。不正受給は問題ではあるが対策のプライオリティがそれほど高いとは思えない

5.一方、親族の扶養義務の強化は国としては人口高齢化のリスクと社会保障のコストを家族に転嫁するもの。その影響は受給者だけでなく受給者を親族にもつ世帯にも及ぶ。その外部効果については慎重な検討が必要なはずである。

6.一方、「芸人の年収5,000万円」がどのような金額か?家計・生計に関する基礎的な知識、他者の生活に対するイマジネーションが必要ではないだろうか。

河本さんは貧困の母子家庭出身。30歳前半まで薄給の芸人だったから貯蓄や資産はほとんどなかったのではないだろうか。ブレイクしてからわずか5年。年収5,000万円といっても税率も高いしその額が50歳まで貰える保証はない。妻と子ども2人いてそんなに余裕があるとは思えない。(自分とは違って)子どもには大学行かせたいとか資産を残してやりたいと思っているだろうし、河本さんのお母さんもそう考えて自分は生活保護でってことにしたんじゃないかとかお人好しの僕は思ったりするんだけど違うかな?

「毎日飲み歩いてた」「後輩に一晩で100万円奢った」とか一般人の感覚で芸人をdisっても仕方ない。というかある種の仕事の方なら「毎晩飲み歩く」ことの仕事的な意味はよくわかるでしょう。

猫ひろしさんのときもそうだけど、やむにやまれずリスク取った人間の足を引っ張りたがる傾向にはウンザリします。社会全体が本当に寛容性を失ってるのがとても気になるところです。

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